第92章

玄関の外に、その二つはきちんと置かれていた。林田知音は迂闊に「自分のだ」と認める勇気が出ない。けれど、あの茶色のレザージャケットを見た瞬間、胸の鼓動だけが勝手に乱れはじめた。

まさか……そんなはず。

左右を見回し、廊下の奥まで目を走らせる。人影はない。

「ママ、これ誰の荷物? なんでおばあちゃんちのドアの前にあるの?」

「……さあ。ママも知らない」

林田知音は鍵を開け、先に目黒らいを部屋へ入れた。外のスーツケースはそのまま。室内に入ってもなお、外は静まり返っている。知音は母にボイスメッセージを送った。三上乃はすぐに、マンションの管理人に荷物と上着を下げさせるよう言ってきたが――なぜ...

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