第5章

 その一言が落ちた瞬間、病室内には死ごとき静寂が満ちた。

 夏川圭一郎は、スマートフォンを握りしめる手の甲に青筋を浮かべ、まるでとんでもない冗談でも聞かされたかのように、強張った笑みを口元に貼り付けた。

「林原透哉、たちの悪い冗談はやめろ。五百川瑞穂に入れ知恵されたのか? 俺に罪悪感を抱かせるために? 俺の気を引くために、こんな茶番を?」

「電話を代われ! あいつ自身の口から言わせろ!」

 ほとんど咆哮に近い怒声だった。その剣幕に、ベッドの上の江原夜子がビクリと身を震わせる。

 だが、電話の向こうの林原透哉は、その激昂に気圧される様子さえ見せない。それどころか、声の温度はさらに下が...

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