第7章
病院の特別個室。江原夜子はベッドの背もたれに弱々しく身を預け、涙に潤んだ瞳で、踏み込んできた警察官たちを見つめていた。
「江原夜子」
氷のように冷徹な声が、彼女の演技を断ち切った。
人垣が割れ、夏川圭一郎が歩み出てくる。皺だらけのシャツに、充血した赤い目。彼の手には花束も、見舞いの品もなく、ただ一組の手錠だけが握られていた。
夜子の顔に張り付いていた笑みが凍りつき、すぐさま被害者を装う表情へと切り替わる。
「圭一郎、やっと来てくれたのね……」
夏川圭一郎はベッドの脇まで進むと、彼女を見下ろした。その眼差しは、かつての溺愛に満ちたものではない。腐敗し、悪臭を放つゴミを見る...
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