第112章 俺がサインする

小野の言葉を耳にした瞬間、古川静弘の瞳孔がきゅっと縮んだ。目の奥を、信じがたいという色が走る。差し出された書類を反射的に奪い取り、表紙の文字を見た途端――息が止まった。

離婚協議書。

羽鳥秋葉は本当に弁護士を立て、離婚の書面を作らせたのだ。離婚する、その意思は揺るがない。

「……これは、本当に彼女があなたに作らせたのか?」

古川静弘は深く息を吸い、小野を見た。書類を握る手が、かすかに震えている。

小野は静かにうなずく。

「はい。羽鳥嬢から、もう一言お預かりしています」

その言葉に、古川静弘の目に一瞬だけ光が戻った。

「……何だ?」

「できるだけ早く署名して。時間を無駄にしな...

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