第116章 彼の心の動揺

病院。

古川静弘は、今日はどうにも胸騒ぎがした。まるで何か大切なものが、自分の手からすり抜けていく――そんな予感がして、理由もなく心臓の奥がざわつく。

「どうしたの、静弘。具合でも悪いの?」

ここ数日、須藤篠華は毎日病室に顔を出していた。甲斐甲斐しく世話を焼き、優しく寄り添う姿は、誰が見ても献身的だ。

古川静弘は彼女を一瞥し、心の揺れを押し込めるように首を振った。

「いや。先生を呼んでくれ。問題ないなら退院の手続きも頼む」

須藤篠華は目を丸くする。

「退院するの?」

「……ああ」

医師からは、状態は大事には至らないと告げられていた。回復がもう少し進めば退院できる、と。

そ...

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