第124章 実の父親

電話を切ったあと、古川静弘は寝室にも戻らず、書斎にも残らなかった。

車は夜の闇を滑るように走り、やがて――長らく足を踏み入れていない邸宅の門前で、音もなく止まった。

ここはずっと専属の人間が手入れしている。芝も木々もきっちり整えられ、一本の枝ぶりまで当時のまま。空気の匂いさえ、五年前と変わらない。

彼女が去ってから、ここへ来ることはほとんどなかった。けれど荒れさせる気にもなれなかった。

自分の庄園だ。――彼女の仕事に気を遣うふりをして、内心では妙に意地を張りながら、わざわざ彼女のスタジオに頼んで庭を整えさせた。そんな光景まで思い出す。

目的もなく歩き、ふと視線がある場所に吸い寄せら...

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