第26章 引っ越す

「離して!」

羽鳥秋葉はかっとなった。

古川静弘は離さない。むしろ、指が食い込むほど強く握り直す。

自分でも、どうしてこんなに苛つくのか分からない。ただ――彼女がまるで、必死に自分と関係を切り離そうとしている。その様子が目に入った瞬間、理由もなく胸の奥がざらついた。

こんな感情は、今まで一度もなかった。

「そんなに急いで出ていくのか? 外に何があるっていうんだ。温水言か?」

口調の端に、本人すら気づいていない嫉妬が混じる。

羽鳥秋葉の胸が大きく上下した。

「古川静弘、どういう意味? 温水さんと何の関係があるの」

そのまま視線だけを階下へ滑らせる。妙に緊張した顔をしている須藤篠...

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