第35章 命の恩人

須藤篠華は怒りに任せて羽鳥秋葉のアトリエを飛び出した。外は雲ひとつない晴天で、日差しが鋭く目の奥を刺す。

(……あの女、2億でも足りないっていうの? いったい、いくら欲しいわけ)

ぐるぐると考えが渦を巻いた、その瞬間。

「……っ、もう!」

篠華は自分の額をぱしんと叩いた。

(何やってるの。お金を押しつけに行ったところで、何の意味があるのよ。あの女がもっと図太ければ、金だけ受け取って約束を反故にすることだってできる。そうなったら、私に何ができるっていうの?)

焦りが判断を鈍らせていた。羽鳥秋葉にこれ以上手間をかけるくらいなら、古川静弘にこそ神経を使うべきだ。

そう腹を決めて、須藤...

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