第40章 契約

古川静弘は、反射的に腹が立ちそうになった。

当然だ。彼が自らサインする契約といえば、平気で十数億規模の案件が並ぶ。条項の一つひとつを、何度も叩いて、吟味して、詰めていかなければならない。

羽鳥家がどうして倒産したのか。

羽鳥の当主が突然病に倒れて判断力を失い、致命的な契約に署名してしまった。瞬く間に会社のキャッシュフローを根こそぎ奪われたのだ。

投資額は膨れ上がるのに回収は遅い。結果、本社ごと関連会社まで道連れにして沈んだ。

その教訓が目の前にある以上、古川静弘は若くとも、契約書に判を押すときは徹底して慎重だった。調査と検討を重ね、何度も何度も確かめる。

それなのに――須藤篠華は...

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