第54章 本当に離婚した

三日後、古川の母はスイス行きの便に乗り込んだ。

羽鳥秋葉は古川静弘と見送りを済ませると、息をつく間もなくそのまま地元の裁判所へ向かった。

車を降り、二人は前後して建物へ入る。言葉は交わさない。

ロビーは人で溢れ、ざわざわと騒がしい。甘い笑みを浮かべ、手をつないで肩を寄せ合っているのは、見ればわかる。婚姻届の手続きに来たのだろう。

一方で、目を赤くしていたり、顔をこわばらせていたり。隣同士に座っているのに互いを見もしない者もいる。――離婚だ。

羽鳥秋葉と古川静弘は、そのどちらとも違った。馴れ合っているわけでも、露骨に険悪なわけでもない。表情だけが、妙に静かだった。

入ってきた瞬間、...

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