第58章 もう行かない

膝のケガというのは厄介だ。退院は早いのに、回復はやたらと遅い。

羽鳥秋葉は昼食を済ませると、その足で退院手続きを終え、車椅子で古川母の病室へ向かった。

病室に着くと、古川母の顔色は少し持ち直していた。酸素マスクは外れている。だが鼻から入ったチューブはまだそのまま――この様子だと、入院は長引きそうだ。

秋葉は胸の内でそっと息を吐いた。なんだか古川母と自分が、同じ「ついてない側」に並べられた気がしてしまう。運の悪さまで連れ立つなんて。

二人の姿を見つけた古川母の目が、ぱっと明るくなる。

「秋葉が来たのね?」

まだ話すのは少し苦しそうだが、さっきよりずっと元気そうだった。

「ほら、こ...

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