第61章 あの男

「やめて!」

もみ合いになっていた、その最中だった。不意に鋭い声が割って入る。

美々ははっとして反射的に手を放し、羽鳥秋葉も動きを止めた。二人そろって、気まずそうに声のしたほうを見る。

声の主は、ひときわ背の高い男だった。雪のように白い肌に、栗色の髪。吸い込まれそうな青い瞳は深く、見る者の心を自然とほどいてしまうような魅力がある。

こういう人は、きっと生まれつきなのだろう。そこに立っているだけで、なぜか人を従わせるような説得力をまとっている。

男は歩み寄り、にこやかに言った。

「お二人とも。人前でつかみ合いなんて、あまり品がいいとは言えませんよね」

その視線が向けられた瞬間、須...

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