第65章 平手打ち

夜――安さんは食卓いっぱいに、目にも鮮やかなごちそうを並べた。

昼間の出来事などどこ吹く風、古川母の機嫌は上々だった。食事をしながら、若いころスイスでスキーをした話や、古川静弘の父と初めて出会ったときのことなど、次から次へと語ってくる。

久しぶりに、いつもは静かで穏やかなその瞳に、若い日のやんちゃな光が宿った。

「今は体が言うことを聞かなくなったけどね。若いときにやったこと、ひとつも後悔してないのよ」

「若いんだから、若い人らしいことをしなさい。会社のことばっかり、陰気に忙しがってないで。年を取ってから、思い出せる面白い話が何もないなんて、つまらないでしょう?」

羽鳥秋葉はどこか上...

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