第69章 何をしているの?

扉がそっと開き、古川静弘がトレーを手に入ってきた。部屋に足を踏み入れた途端、甘酸っぱくて濃厚な香りがふわりと広がる。

安さんの料理じゃない――と、羽鳥秋葉はすぐに気づいた。

あの人が作るパスタは、たいてい黒胡椒かクリームマッシュルーム味だ。トマトを使うことはあっても、こんなふうに酸味がしっかり立つ味にはならない。

秋葉は小さく鼻をひくつかせた。途端に口の中へじわりと唾液が湧いてくる。

ベッドの上で身を起こし、少し驚いたように目を瞬く。

「あなたが作ったの?」

古川静弘はくすっと笑った。

「まさか。俺にこんなの作れるわけないだろ」

「安さんに頼んだんだ。最近ずっと食欲なさそうだ...

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