第73章 私の奥様をどこへ連れて行くつもりだ?

 彼は手を伸ばし、ぷくっと膨れた彼女の頬をつん、と突いた。

「ほんとに温泉、行かないのか?」

「行かない」羽鳥秋葉は彼の手をぱしりと払いのける。

「そっか」古川静弘はわざとらしく残念そうに息を吐いた。「せっかく、2日だけでもゆっくりできるのに」

 そう言いながら、彼は秋葉の表情をうかがう。

「まあ、君が行かないなら仕方ない。早く休めよ。おやすみ」

 羽鳥秋葉は、わずかに目を見開いた。

 もう少し食い下がってくると思っていたのに。

 古川静弘が出ていったあと、秋葉はベッドに腰掛けたまま、しばらくぼんやりしていた。

 さっき突かれた頬にそっと触れると、理由もなく胸の奥がすうっと...

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