第76章 お客

「大丈夫よ」

羽鳥秋葉はふっと笑い、無意識に下腹へ手を添えた。瞳には、やわらかな慈しみが揺れている。

「まだできたばかりだし、そんなにしんどくないの。あと数か月したら、あなたが『働け』って言っても動けなくなるんだから」

他愛ない話を少ししてから電話を切り、秋葉は籐椅子に腰を下ろしたまま、しばらくぼんやりと過ごす。やがて、そっと目を閉じた。

夜風は軽く、庭の花はちょうど盛りで、甘く澄んだ香りが波のように運ばれてくる。

ふいに、薄いブランケットが肩にかけられた。

秋葉が目を開けると、籐椅子の脇に古川静弘が立っていて、穏やかな笑みでこちらを見下ろしていた。

秋葉はもう一度、下腹を撫で...

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