第5章

イヴリンの視点

「立って。ついてきて」

 ジュリアンの声は相変わらず冷たかった。けれど差し出された手は、驚くほどあたたかくて、力強い。

 拒もうとして唇を噛んだ。だけど全身びしょ濡れの自分と、視界を塗りつぶすような豪雨を見上げてしまえば――行く場所なんて、どこにある? 路上で寝ろっていうの?

「母の家が近い」ジュリアンが言う。「一人暮らしだ。空き部屋もある」

「でも――」

「お願いじゃない。命令だ」

 結局、私は彼の後ろを歩いた。凍えた指先と、空っぽの財布の前じゃ、プライドなんて紙くず以下だ。

 ドアが開くと、白髪混じりで目元のやわらかな女性が立っていた。ジュリアンの母、マー...

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