第2章

 濁った汁がじゅうたんに飛び散り、美津子のブラウスと膝の上まで跳ねた。

 彼女の身体が強張る。ほんの一瞬、その目に剥き出しの怒りが走った。

 私は両手で顔を覆い、情けないほど大きな嗚咽を漏らした。「ごめんなさい! 本当にごめんなさい、美津子! 一日中お腹が痛くて……私、ほんと……私って役立たずで……」

 仮面が、ぱちりと元に戻る。

「大丈夫よ、いい子」と彼女は猫なで声で言い、私の髪を撫でようと手を伸ばした。

 その手が頬をかすめた瞬間、皮膚に残る血の金属臭が喉を絞めた。

「出してしまったほうがいいのよ。溜め込むよりね」

 寝室のドアが乱暴に壁へ叩きつけられた。

 宗一郎おじさんが踏み込んでくる。ブーツが床板を重く鳴らした。

 彼は美津子を押しのけ、私の車椅子の肘掛けを掴んだ。腰を落として、いったん私の腰の高さで顔を合わせ――ゆっくり顎を上げ、私の目を捉える。

 髪は脂で束になり、血走った目は落ち着きなく揺れていた。

「汁を吐いたな」宗一郎が囁く。底のほうで危険に沈んだ声だった。

「……どうしてだ?」

 言い訳を作るより早く、彼の手が私の右太ももに食い込んだ。

 汚れて切られていない爪がズボン越しに肉へめり込み、筋肉を容赦なくつまみ上げる。

 目の奥が白くなる痛みが、蘇りかけた神経を駆け上がった。

 蹴り飛ばしたい、痛みから身を引きたい――本能が叫ぶ。私は頬の内側を血の味がするほど噛み、脚がただの重りのままでいるよう押さえつけた。

 そして、心の底からの、引きつった涙が噴き出した。

「やめて! 血が出ちゃう!?」私は泣きわめき、上半身だけをばたつかせながら脚は死んだままにした。

「血、見て!」

 美津子が甲高く叫び、突進して宗一郎を突き飛ばした。乾いた音とともに、彼女の手が凶悪な平手打ちで宗一郎の頬を打ち抜く。

「頭おかしいの!?」美津子は唸り、私の脚を自分の身体で庇った。

「その組織を傷めたら、完璧な筋肉を台無しにしたら、娘にどう説明するつもりなのよ!」

 宗一郎はたちまち縮こまった。目から恐ろしい刃が消え、代わりにみっともない罪悪感が浮かぶ。

 彼は必死に謝りながら、ドアのほうへ後ずさった。

 私は手のひらに顔を埋めて泣き続けた。だが芝居の下で、血が氷に変わっていく。

 ――娘にどう説明する?

 娘って、何のこと? 彼らは何を育てているの? いや……私を何のために『収穫』するつもりなの?

 数時間後、彼らは私を食卓へ運んだ。

 夕食は完全な沈黙だった。美津子は、さっきと同じ濁った汁の、湯気の立つ新しい椀を私の前に置く。彼女はテーブルの向こうに立ち、私の一挙手一投足を見張った。二人とも自分の料理には手をつけない。

 私は震える指でスプーンを取った。脂の膜を押し分け、底をかき混ぜて早く冷まそうとする。スプーンの先が、硬い塊に当たった。

 そっと、表面の少し上まで持ち上げる。

 骨じゃない。溶け切っていない皮膚と脂肪の塊だった。

 白く煮えた淡い肉の表面に、薄れた小さな黒い星がいくつも刻まれている。

 刺青。

 肺がぎゅっと縮む。私はその星を知っていた。妹の未亜の足首にある刺青と、まったく同じだ。

 私はただ屠殺場に座っているんじゃない。姉妹の残り物を食べさせられている。

 吐き気が荒々しく突き上げたが、私は喉に乾いた空気を飲み込ませた。皮膚の塊をスプーンから滑らせ、椀の底へ沈める。私は汁を唇へ運び、一口すすった。

 宗一郎が突然テーブルに身を乗り出し、顔を私の数センチ先まで近づけた。

「お前、筋のついた肉が好きだったよな」彼は私が飲み下す顎の動きを観察しながら言った。

「今日はなんで汁だけなんだ?」

 私は幼い子みたいに唇を尖らせ、目を大きくして無垢を装った。

「さっきのせいでまだお腹が痛いの。液体なら飲めるけど……」

 宗一郎は、苦痛の三秒間、私を見つめた。やがて肩の力が抜ける。奇妙に霞んだ涙の膜が、彼の目に浮かんだ。

「いい子だ」宗一郎は詰まるように言った。恐ろしいほどの愛情が声に絡みつく。

「汁だけ飲め。治る力はどうせ液体のほうに全部ある」

 夕食は終わった。私は疲れて目が回ると言い、彼らは私を寝室へ戻した。

 ドアが閉まった瞬間、安心の幻は砕け散った。真っ暗な部屋で私は座り込み、カーテンの隙間から忍び込む月明かりの細い帯を見つめた。断片が、恐怖のパズルとして噛み合っていく。

 私を麻痺させた交通事故は事故じゃない。計算された罠だった。クローゼットの警告。汁の中の未亜の刺青。

 彼らは神経が治るのを待っていた。肉が「食べ頃」になる、その瞬間を待って私を解体するつもりだった。今夜眠ったら、二度と目を覚まさないかもしれない。逃げなきゃ。

 私は車椅子の肘掛けを強く握り、暗闇の中で身体を持ち上げ、体重を確かめる。

 膝を固定してまっすぐ立ち上がった、その瞬間――金属的な「カチッ」という音が部屋に響いた。

 閂だ。

 ドアノブが回り、扉が内側に開く。

 宗一郎が戸口に立っていた。手には予備の鍵。廊下の明かりが彼の顔に深い影を落とし、凶悪に見せる。

「寝るって言ったよな?」彼は掠れた声で言った。

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