第130章 盗聴器

林田唯月は、あの夜の光景を思い返していた。

矢吹薫が去っていく背中を見送ったときは、ただ肩の力が抜けただけだった。――矢吹薫のやり口を、忘れていた。甘かった。

坂東勇が不安げに眉を寄せる。

「これからどうする? 部屋、変えるか?」

林田唯月は少し考えたあと、きっぱりと首を横に振った。

「いい。部屋を変えたって、あの人なら別の手で盗聴してくる。だったらこの二日くらい、わざと『それっぽい情報』を喋ってやるの。盗聴器の存在を信じ切らせれば、あとで使えるかもしれない」

自分の居場所なんて、矢吹薫が本気になればいくらでも追える。

なら、いっそ――乗ってやる。

坂東勇も小さくうなずいた。...

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