第134章 許さない

中では誰ひとり返事をしなかった。

秘書は、胸の奥でそっとため息をつく。

いったい何なんだ、これは。あの頃は矢吹社長が意地でも椎名嬢の肩を持って、奥様は「死んだこと」にして姿を消した。なのに今度は、矢吹社長が意地でも奥様を取り戻そうとしている。

けれど、割れた鏡は元には戻らない。

この「取り戻す」という行為に、いったい何年かかるのか――想像もつかなかった。

矢吹薫は今、魂の抜けた人形みたいだった。誰かに支えられながら、林田唯月の部屋の扉だけを、ただ見つめ続けている。

階段を下りる途中、矢吹薫の視界がふっと闇に沈み、そのまま完全に意識を失った。

秘書はよろけそうになりながらも、歯を...

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