第135章 彼女の身分

林田唯月は彼の腕にそっと絡め、二人で脇の休憩スペースへ移った。

見渡す限り、集まっている若者たちが身につけている宝飾品の総額は、軽く千億を超えるだろう。

「唯月、何を見てるんだ?」

江口未黒が彼女のためにグラスを一杯もらってきて、声を落として尋ねた。

「すごく綺麗な人を見かけたの。さっきまであそこにいて、緋色のドレスを着てた。……目を引くくらい綺麗だった」

その女のことは、以前どこかで耳にしたことがある。家が傾いてからも自力でこの世界に戻り、少しずつ足場を固めた――そんな、いわゆる『成り上がり』の象徴みたいな人物だと。

唯月は遠くを指さした。

「ほら、あの人」

ところが、相手...

ログインして続きを読む