第147章 すべては偽装

江口未黒は、その一部始終を黙って見ていた。

林田唯月の瞳の奥にある痛みも。矢吹薫の、逃がす気のない執着も。

江口未黒は一歩前へ出て、林田唯月を背中に庇う。

「行こう」

林田唯月は小さく頷き、彼の後ろについて歩き出した。

――さっきまで胸の奥で膨らみかけていた告白の熱が、またふっと消える。

林田唯月は息を吐いて、それでも言った。

「先輩……私たち、付き合いませんか」

けれど江口未黒は、その瞬間だけ迷った。

見えてしまったのだ。林田唯月と矢吹薫が、まだ互いを愛していることが。

受け入れたあと、彼女が後悔したら。

そう思うと、喉の奥がきゅっと固くなる。

その迷いを察したのか...

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