第28章 あんたをどうすればいいんだ

数秒の沈黙が落ちた。

次いで、くぐもっているのに妙に輪郭だけははっきりした「うん」が返ってくる。

林田唯月は一度だけ、わがままを通したくなった。この息の詰まる街から、逃げ出したかったのだ。

「先輩、私もう休みます。おやすみなさい」

通話が切れたあとも、江口未黒はスマホを握ったまま、間抜けみたいに笑い続けていた。

何年も待ち続けてきた。ようやく、光が差した気がした。

矢吹薫が大事にできないなら――奪い取っても、文句は言わせない。


それから数時間後。

林田唯月はうとうと眠りに落ちたが、浅い。夢が、真ん中からびりっと裂けたみたいに不安定だった。

片方には、かつての、愛情...

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