第29章 私が死なない限り

矢吹薫が身を乗り出す。彼だけの匂いが、いきなり覆いかぶさってきた。

林田唯月は両手首を枕に押しつけられ、脚も強引に開かされる。屈辱的な体勢。抵抗の余地なんて、どこにもない。あとはただ、否応なく抱かされるだけ――。

「やめて!」

次の動きを察し、唯月は喉が裂けるほど叫んだ。

もがいたせいで胸元が大きくはだけ、白い肌が露わになる。

矢吹薫の喉仏がごくりと上下した。眼底に濃い欲が渦巻く。

「林田唯月。子どもが欲しいんだろ。前は何をカマトトぶってた? なあ……もう一回、試してみるか?」

――その、決定的な一秒。

椎名伴凪から電話が鳴った。

聞き慣れた着信音に、唯月の身体からふっと力...

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