第37章 お望みどおり

「薫!」

椎名伴凪も知らせを聞きつけて駆けつけてきた。顔には隠しきれない喜びが浮かんでいる。

「離婚したの? 薫、よかった……感情のない結婚、やっと終わるのね。もう苦しまなくていい」

矢吹薫は答えなかった。

――自分だけが知っている。

俺は林田唯月と離婚なんてしたくない。離婚する未来など、一度だって思い描いたことはない。

もし誰かとこの先を生きるなら、それは必ず林田唯月だった。

それなのに今――。

自分だけを見ていたはずの女を、自分の手で失くした。取り戻せないなんて、認めたくない。

一方で、椎名伴凪の言葉を耳にした林田唯月は、ふっと足元が崩れたように力が抜けた。頬に貼りつい...

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