第49章 彼の独占欲

「矢吹薫!」

林田唯月が怒鳴りつける。——その一声が、彼を暴走の淵から引き戻した。

ついさっき、唯月は見てしまったのだ。矢吹薫の瞳の奥に、冷たく研がれた殺意が宿った瞬間を。

心臓がひゅっと縮む。

今の矢吹薫は、殺す気だった。

……狂ってる。

ほとんど反射みたいに、過去の記憶が蘇る。

かつて、商売敵の坂東強が、唯月の身体に手を出そうとしたことがあった。

当時はまだ「矢吹社長」と呼ばれる前の矢吹薫が、深夜、棍棒を手に坂東の腕を――生身のまま叩き潰したのだ。二度と元には戻らないほどに。

その後、矢吹薫は頂点へ上り詰め、グループを築いた。

そして坂東家へ圧力をかけ続け、「落とし前...

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