第56章 彼女は死ぬ

「いやだ……! 助けろ! 必ず助けろ!」

矢吹薫は半狂乱で叫び、もがいた。

医師は困ったように息を吐き、静かに説明する。

「矢吹社長……人間の身体は、いちばん精巧で、いちばん繊細な機械です。もし脳が『もう終わりだ』と判断してしまえば、臓器も連鎖して諦めていく。こちらにできるのは、尽くすことだけです……ただ、もし可能なら」

医師は言葉を選び、続けた。

「何かしらの刺激で、生きたいという気持ちを呼び戻せれば」

矢吹薫はよろけて後ずさり、目の奥は血走っていた。

そして、止める声も聞かずに手術室へ突っ込む。

林田唯月の身体には管が幾本も刺さり、機械が無機質な電子音を刻んでいる。

ピ...

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