第59章 すべて異常なしと

「検査結果はすべて正常です、唯月さん。風邪で熱が出たときに薬を飲まれたでしょう? その影響で、一時的に血液データがぶれたんだと思います」

坂東勇の顔に、肩の荷が下りたような笑みが浮かんだ。

その瞬間、林田唯月の思考が、ふっと霧散した。

——正常?

じゃあ、あのときの検査は何だったの。

いまも鈍く痛むこの腹は、いったい何なの。

矢吹薫の眉間にあった心配の色が、刹那で嫌悪へ変わる。

彼は足早に報告書をひったくり、目にも留まらぬ勢いで読み下すと、苛立ちに任せてそれを林田唯月の顔へ投げつけた。

「いつまで俺を騙す気だ。ほら、見ろ。全部正常だ。……お前、いつからこんな人間になった?」

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