第7章 死ぬなら遠くで死ね

「林田唯月っ!」

矢吹薫は、その瞬間すっかり取り乱した。

瞳孔がきゅっと縮む。伸ばした手は宙を掻き、掴めたのは空気だけだった。

階下へ駆け降り、触れようとした、その刹那――

「……触らないで」

林田唯月が苦しげに顔を背け、壁に手をつきながら、ゆっくりと身体を起こす。

拒まれた矢吹薫の顔から、熱がすっと引いた。

「自業自得だろ、林田唯月。今さら何を演じてる」

唯月は唇を噛みしめ、声を一切漏らさない。足を引きずり、よろめきながら外へ向かう。

矢吹薫は思わず一歩、追いかけた。

雨の幕の向こうの背中が――記憶より、ずっと細い気がして。

いつから、あんなふうになった?

そこへ、...

ログインして続きを読む