第71章 当時の真相

一方その頃、矢吹薫はまだ移動中だった。

助手席の秘書がハンドルを握り、世間話みたいな調子で言う。

「矢吹社長、病院で誰を見たと思います? 結城嬢ですよ。風邪こじらせて熱まで出してて。通りがかったら、口汚く誰かを罵ってました」

昨夜、湖畔で結城羽に罵られた声が脳裏をよぎる。矢吹薫は眉を寄せ、珍しく会話に乗った。

「俺をか。それとも伴凪をか」

「椎名嬢です。宝石で脅して、外で凍えさせたせいで風邪ひいたって……」

秘書は感心したように続ける。

「奥様には、いい親友がいて羨ましいですね。奥様のために椎名嬢に頭を下げに行くなんて」

その言葉に、矢吹薫の胸の奥がざわついた。

結城羽があ...

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