第83章 指一本で二千万と引き換えに

林田唯月は、太田恵美が札束の海に得意げに浸っている姿を、ガラス越しに眺めていた。

――喜べばいい、太田恵美。いちばん浮かれている瞬間が、いちばん痛く落ちる瞬間だ。

傍らでマネージャーが声を潜める。

「林田嬢、次に移ってよろしいでしょうか」

「ええ。始めて」

林田唯月が軽く手を振ると、向かいの個室では太田恵美の興奮が頂点に達していた。

まるで本物のギャンブラーだ。向かいの痩せた男を睨みつけ、唯一の獲物だとでも言うように舌なめずりする。

その男が、人間のものとは思えない呻き声を漏らし、どさりと膝をついた。

手の中の数枚のカードを、痛みに耐えるみたいに握り潰す。

「勝てたはずだろ...

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