第88章 悪辣な企み

その問いかけを終えた瞬間、林田唯月は、彼の顔色が青から白へと変わっていくのをはっきり見た。

矢吹薫はどこか自信なさげに口を開き、反射的に林田唯月の視線を避ける。

「……あの頃、あの人はただの家政婦だった。金を持ち逃げして逃げたのは事実だ。でも、あの状況じゃ……あの人にも事情があったんだ」

林田家に与えた傷がどれほど深いか、彼だって分かっている。だが――過ぎたことは、もう過ぎたことだ。

林田唯月の瞳が、じわじわと冷えていく。

「そう。事情ね。……ねえ、前にパーティーで私にベタベタ触ってきた木下明人のこと、覚えてる?」

矢吹薫はなぜ急にその話が出るのか分からず、曖昧に頷いた。

「覚...

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