第92章 真の顔

部屋はがらんとしていて、聞こえるのはぽた、ぽた……と水が落ちる音だけ。

椎名伴凪は、傷口から絶え間なく血が流れていく感覚に襲われていた。血が落ちるたび、体の力まで一緒に抜けていくみたいで、指先が冷たくなる。

恐怖と怯えが、思考を丸ごと塗りつぶす。

――死ぬ。

本気でそう思った。脆い心の堤防が、じわじわと崩れていく。

もし本当に死んだら、全部終わりだ。

悔しい……。

けれど、真実を口にしたら、林田唯月はきっと矢吹薫に告げる。

そうなれば、薫の中の自分は完全に終わる。

その頃、林田唯月は別室で、壁に掛けられた監視モニターを静かに見つめていた。

実際には、椎名伴凪の手首の傷はと...

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