第93章 真相を知っていても

坂東勇はそう言い放つと、矢吹薫の手首を掴んでいた手を離した。

首だけを傾けて林田唯月を見る。もう何も言わない。

矢吹薫は唇を動かし、最後に言い訳めいた一言だけを残した。

「……あいつ、今は妊娠してて情緒が不安定なんだ。安心できなくて……この件は、必ず謝らせる。君にもちゃんと説明する」

林田唯月はソファの隅で身を縮め、ふわふわの毛布に身体ごと沈み込んでいた。

矢吹薫の弁解など聞く気はない。視線は監視モニターに釘づけだ。

椎名伴凪の頭には麻袋。釘で磔にされたまま、嗚咽混じりに喚き散らしている。罵詈雑言の次は命乞い、また罵り――。

坂東勇は汚い言葉に耐えきれず、リモコンを取り上げて電...

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