第103章 君は思い上がっている

浅見朝治はわずかに目を動かし、牧野晴の視線を追った。案の定、背を向けて立ち去ろうとしている玉井彩歌の姿が目に入る。

――そんなに急いで帰りたいのか。

安のことなんて、どうでもいいと言わんばかりに。

そう思った瞬間、胸の奥にどす黒いものが沈んだ。

「朝治さん、玉井さんに声をかけませんか。きっと、こちらに来づらいだけで……」

牧野晴が気遣うように言う。

「だって、安が具合悪かったときも来なかったでしょう? 今日はさすがに放っておくのはひどいって思って、病院で待ってたんじゃないですか」

浅見朝治の鼻から、ふっと冷たい息が漏れた。

仮にそうだとしても――安に会わせる気はない。

昨夜...

ログインして続きを読む