第16章 行くあてがないのか?

テラスの風は冷たく、頬を撫でるたび刃で切りつけられるみたいだった。

玉井彩歌は大きく息を吸い込み、手の甲で頬の涙の跡を拭う。乱れたこめかみの髪を整えてから、立ち上がり、帰ろうとした。

けれど振り返った瞬間、少し離れた場所に日野弦羽がいるのが目に入った。

火のついていない煙草を指に挟み、手すりにもたれて夜景を眺めている。気配に気づいたのか、彼はゆっくりこちらを向き、赤くなった彩歌の目元に視線を落とした。

彩歌は反射的に顔を背ける。こんなみっともないところを見られたくなかった。

「すみません、日野機長……笑われちゃいましたね」

日野弦羽はさっきのことを問いただしはしない。ただ煙草を指...

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