第43章 彩歌は?

夕暮れがあたりを呑み込み、坂東伽恵は帰宅するなり、リビングの大きなソファに沈み込んだ。目の前のローテーブルに走る木目を、ただぼんやりと追っている。しばらく、意識がここに戻ってこないみたいだった。

書斎からマグカップを手に出てきた夫の周防桂は、一目でそれに気づいた。

「……どうしたんだ?」

隣に腰を下ろし、覗き込む。

「甘味処から帰ってきてから、ずっと黙りっぱなしじゃないか」

坂東伽恵は長く息を吐いた。眉間に深い皺が刻まれている。

「今日ね、外で……ある子に会ったの」

「誰だ?」

「あなた、覚えてる? 昔、うちの航空院にいた……玉井彩歌って子」

伽恵が夫を見た。視線は複雑で、...

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