第54章 君が笑うととても可愛い

そのころ、街の反対側――雰囲気のいい上品なレストラン。

玉井彩歌は無表情のまま通話を切り、スマホを伏せてテーブルに置くと、ようやく顔を上げた。向かいに座る男へ、静かに告げる。

「……ありがとう」

男は気取らないカジュアルなセットアップ姿で、眉目はやわらかく、整った顔立ちをしている。暖色の照明が薄いヴェールみたいに輪郭を包み、いっそう穏やかに見えた。

その言葉に、男は困ったように笑う。

「彩歌。俺にまでそんなに他人行儀って、ちょっと寂しいだろ。俺たち、付き合いだけなら十年以上だぞ」

隣で海老の殻をむきながら、進藤雀が大げさに頷いた。

「そうそう。彩歌、晃年にまで気ぃ遣うことないっ...

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