第65章 あの子って、まさか

夜が更け、騒がしかった浅見家の満月祝いも、ようやく幕を下ろした。

客が引けたあと、浅見朝治はひとり書斎へ戻り、ひとり掛けのソファに沈み込む。長い脚を組み、ネクタイは乱暴に引っ張ったまま緩んでいる。床まで届く窓から、冷たい月光が差し込み、彫りの深い横顔の輪郭を白く浮かび上がらせた。

眉間に、うっすらと皺。

頭の奥に、どうしても玉井彩歌の姿が浮かぶ。

――コンコン。

ノックの音が、思考を断ち切った。

牧野晴が、繊細な磁器の椀を両手で捧げるようにして入ってくる。

「朝治さん、二日酔いに効くスープ、どうぞ」

彼女は牧野新と一緒に帰らず、自分から残った。浅見朝治の世話をしたい、その一心...

ログインして続きを読む