第86章 ふざけるな、俺と一緒に帰ろう

玉井司は沈んだ目で玉井彩歌をひと睨みしてから、ようやく手を下ろした。

鼻で短く哼き、坂東蘭に目配せする。

坂東蘭はすぐ察して立ち上がり、玉井彩歌の腕を掴んで洗面所へ引っぱった。

「ほら、見なさいよ。なんでそんな意地張るの? あんたが父親に楯突かなきゃ、お父さんだって本気で手を上げたりしないでしょ」

玉井彩歌は何も言わない。ただ坂東蘭に引かれるまま歩いた。

玉井司が彼女を殴れないはずがない。

小さい頃から殴られずに育ったのは玉井愛絵であって、彼女ではないのだから。

それに今の坂東蘭だって、心配しているわけじゃない。浅見朝治が来た。だから彼女の顔をきれいにさせる。まるで商品が売り場...

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