第89章 彼女の子どもがいとおしい

「安……熱が出たの?」

玉井彩歌の頭の中には、浅見朝治が去り際に残した言葉だけが、いつまでもこびりついていた。

浅見家はいったい、どうやって子どもの面倒を見ているのだろう。

あれだけ人がいて、たった一人の子どもすらまともに看られないの?

安はまだ小さい。熱だって、命取りになりかねない。

胸の奥がざわつき、落ち着かない。

――安、大丈夫かな。

会いに行きたい。

けれど浅見家は、彼女を歓迎しない。門をくぐることすら許されないだろう。まして安に会うなんて。

「彩歌……」

進藤雀が心配そうに玉井彩歌を見つめ、小さく声をかけた。

さっきの電話の内容は、皆が聞いていた。

浅見家に...

ログインして続きを読む