第321章 一つしか守れない

小島麻央は二秒ほど呆然とした後、ハッと我に返り、すぐさま身を翻して隣のエレベーターへと駆け出した!

扉はその瞬間に閉ざされ、中にいる人物の顔を見ることはできなかった。

力を込めてボタンを連打したが、エレベーターはすでに上昇を始めている。

短い動揺の後、小島麻央はすぐに冷静さを取り戻し、思わず自嘲の笑みを漏らした。

今泉拓真のことを想うあまり、幻聴まで聞こえるようになってしまったらしい。

もし彼が帰ってきているのなら、自分や美佳のところに帰ってこないはずがないのだ。

物寂しげに背を向け、駐車場の車へと戻る。

本革のシートに身を預け、目を閉じて無理やり眠りにつこうとした。

どれほ...

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