第324章 自分の体を捧げる

「もちろん、お二人は長年連れ添い、可愛いお嬢様もいらっしゃるのですから」

ボディーガードが口を開いた。

「今泉社長、奥様をお忘れになるなんてあんまりです。社長が事故に遭われてから、奥様がどれほど苦しまれたことか。社長が亡くなられたと思い込み、後追い自殺しかけたほどなんですよ……」

今泉拓真はわずかに呆然とした。

あの女のことなど全く覚えていないはずなのに。なぜかその言葉を聞いた瞬間、鋭い痛みが胸の奥から湧き上がり、全身を駆け巡った。

息が止まりそうになるほどの、激しい胸の痛み。

「今泉社長、奥様は……」

「黙れ!」

ボディーガードの言葉を、今泉拓真が遮った。

彼は立ち上がり...

ログインして続きを読む