第357章 妻よ、俺はすべてを思い出した

小島麻央が叫んだ。

「きっと……お兄ちゃんだ!」

手下が状況を悟った瞬間、懐から拳銃を抜く。片腕で背後から小島麻央の首をがっちり押さえ、もう片手の銃口を彼女のこめかみに突きつけた。

「平野裕司!」スピーカー越しに内野浩史の声が響く。「うちの奥様を放せ! さもないと、今日ここで命はないぞ!」

「ボス、麻央さんはこっちの手の中です。あいつら、下手には動けません」手下は冷静に言い切る。「俺が麻央さんを押さえたまま取引する。ボスは無事に逃げてください!」

平野裕司は振り返り、小島麻央を見た。深い瞳は、凪いだ海みたいに揺れない。

「俺だけ助かって……それで何が面白い」

「ボス! 命があれ...

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