第6章
「北倉佳菜、自分を騙すのはもうやめろ」
井戸川勇崎は私の向かいに座り、私が口にしないステーキを切り分けながら、笑ってしまうほど自信たっぷりに言い放った。
「俺たちの何年もの付き合いを、そう簡単に断ち切れるわけがないだろう? お前の考えなんてお見通しだ。ただの意地っ張りだよ。そうやって俺を折れさせたいだけなんだろ」
その自信に満ちた顔を見ていると、私の意識は瞬時にあの泥沼のような雨の夜へと引き戻された。
あの日、バレンタインデーのことだ。
井戸川勇崎に頼まれて、書斎にあるギフトボックスを持ってホテルへ向かった時のこと。
中身は私がずっと欲しかったドレス。高価で、どうしても...
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