第129章:アッシャー

ドアが爆発でもしたみたいに勢いよく開き、冷気といっしょにざわめきが雪崩れ込んでくる。

「うそでしょ――まさか二人、本当に何か焼いたの?」

ゾーイの声。でかい。やたらと上機嫌。

そのすぐ後ろにタイラー。「うわ、ここ……シナモンの天国みたいな匂いがする」

俺は反射的に一歩引いて、注目をペニーに渡した。ペニーは控えめであたたかな笑みを浮かべる。けれど指先は落ち着かず、カウンターの縁をいじっている。

残りの連中もぞろぞろと押し入ってくる――ジョナサン、レベッカ、それにサッカー部の連中が何人か。みんな頬を赤くして、風に煽られた顔をしていた。寒さで頬は桃色、ブーツがフローリングに雪の足跡を残して...

ログインして続きを読む