第153章:アッシャー

キャビンの扉を閉めた瞬間、感情がいっせいに押し寄せてきた。

怒り。不安。安堵。

事情もわからない愚か者どもを助けるために、狼を傷つけなければならなかったことへの怒り。あいつらがいちばん簡単な規則すら守れなかったせいで、俺まで引っかき傷だらけになったことへの怒り。せめてマックスにペニーのことを頼む判断ができたことへの安堵。そして、実の兄に頼むよりマックスに見ていてもらうほうが気が楽だと感じてしまう、自分でも説明のつかない怒り。

だが、ペニーの姿が視界に入った瞬間、ほかのすべてがかき消えた。残ったのは、ひとつの、全身を食い尽くすような恐慌だけだった。

震えている。手だけじゃない。頭のてっぺ...

ログインして続きを読む