チャプター 220: ペニー

彼はもう一度、やわらかく、ゆっくりとキスをする。まるで私の笑顔のかたちを記憶に刻みつけようとしているみたいに。呼吸を落ち着かせようとしているみたいに。そして、もし私が何も知らなかったなら――彼が瞳の奥の嵐をどれほど慎重に守り隠しているかを知らなかったなら――濡れたもの、硝子のように光るものがふっと立ち上がりかける気配がある、と誓ってしまいそうだった。

涙。

嬉し涙、かもしれない。あるいは、名づけるには複雑すぎる涙。

けれど彼は、もう一度だけキスをして、それから何事もなかったみたいに身を引き、咳払いをする。まるで私がいま、彼が失って、それでも愛していた男の欠片をひとかけら、差し出したばかりだ...

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