第226章:アッシャー

彼女は俺の腕の中で、かろうじて意識をつないでいる。体は軽いのに、胸に預けられた肢体は力なくぐったりとしていた。俺は床に膝をつき、彼女を抱きかかえ、囁き続ける。この悪夢ではない何かに、彼女を結びとめておきたくて。

「プリンセス」湿った髪の束を頬から払って、俺は低く呼ぶ。「俺がいる。大丈夫だ。こっちにいろ」

息はしている――くそ、息はしている。だが浅い。遅い。まぶたの縁の睫毛がふるふると震え、目覚められない夢に囚われているみたいだった。彼女が遠のく一秒ごとに、俺の中のパニックがせり上がる。脈を確かめる。まだある。けれど皮膚は冷たく、湿っていた。

だから、しゃべり続ける。

「もう安全だ。あい...

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