第232章:ペニー

アパートを出たくなかった。

ブーマーは訊きもしなかった。

彼は――言い渡した。きっぱりと。あの静かで地に足のついた声で。命令みたいに聞こえないのに、気づけば私は言われたとおりに動いている。彼は清潔な服を手渡し、二十分の猶予をくれて、こう宣言したのだ。「飯に行くぞ。ちゃんとした飯だ。俺が焦がしてないやつ」

別に、必死で抵抗したわけでもない。

そして今……私は繁華街の脇道、吊り下げられたストリングライトの下に立っている。柑橘と胡麻の匂いが漂うポキ丼の店の前で、どうして私はここにいるんだろう、と考えている――悪夢を生き延びることさえ「ひとりで背負わなくていいもの」みたいに感じさせる男と一緒に...

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